集合論①の続きでもあるが,集合論①では実数全体の集合の部分集合として見ていったものを,今度は自然数から新たな数を導入することによって複素数の集合を考えていく.
自然数の集合$\mathbb{N}$
自然数は\[ 1,2,3,\dots \]であるが,この自然数全体のなす集合を$\mathbb{N}$と書く.自然数の集合$\mathbb{N}$には加法(足し算)と乗法(掛け算)が定義されている.一方,加法の逆演算である減法(引き算)や乗法の逆演算である除法(割り算)は自然数の範囲内では自由にできない.例えば$3-10$や$3\div 10$が自然数の範囲では考えられない.このような状況を自然数の集合$\mathbb{N}$は加法と乗法について閉じているという.
整数の集合$\mathbb{Z}$
ある$n\in \mathbb{N}$に対して,加法に関する逆元を$n+(-n)=(-n)+n=0$となるような数$-n$を導入して,これらを負の数とよぶ.自然数と負の数,$0$をまとめて整数といい,この集合を$\mathbb{Z}$で表す.整数全体の集合$\mathbb{Z}$には加法,減法,乗法の3つの演算が成り立っている.つまり$\mathbb{Z}$は加法と減法と乗法について閉じている.整数の集合に成り立つ乗法は,自然数に成り立つ乗法に対して,$a,b$を自然数とするとき\[ (-a)\cdot b=b\cdot (-a)=-ab \] \[(-a)\cdot (-b)=(-b)\cdot (-a)=ab\]と拡張することによって定義される.
有理数の集合$\mathbb{Q}$,実数の集合$\mathbb{R}$
さらに除法も自由に行える集合を考えると,整数をさらに拡張して有理数(分数)を定義したい.整数の組$(p,q)$(ただし$q\neq 0$)の全体を考えて,その中の2つの組$(p,q)$と$(p’,q’)$は$pq’=p’q$であるときに等しいと定める.このような組を有理数とよび,有理数全体の集合を$\mathbb{Q}$と書く.また,有理数は一般的に$\frac{p}{q}$や$p/q$のように書かれる.集合論①でも述べたように有理数全体の集合$\mathbb{Q}$は整数全体の集合$\mathbb{Z}$を含み,整数は上記の有理数の記法で表すと$\frac{p}{1}であるが,ふつう分子にあたる$p$のみを書き,分母にあたる$1$は省略される.
有理数と無理数をあわせて実数といい,実数全体の集合を$\mathbb{R}$で表す.実数の詳しい話は後においておく.
複素数の導入
実数の範囲で$x^2+1=0$の解を求めたいとしよう.左辺の$+1$を右辺にもっていき$x^2=-1$となるが,実数の平方(2乗)は負の数になることはないので,実数の範囲では解を求めることはできない.そこでこの方程式の解を$i=\sqrt{-1}$であることにすると,$i^2=\sqrt{-1}^2=-1$であり,この$i$のことを虚数単位という.物理学などでは虚数単位を$j$と表すこともあるが,ここでは$i$を用いることにする.
$a,b$を実数として\[ \alpha=a+ib=a+bi \]と書かれる数を複素数という.複素数全体を$\mathbb{C}$と書く.複素数$\alpha = a+bi$について,実数$a$を$\alpha$の実部,実数$b$を$\alpha$の虚部といい,それぞれ\[ a=\mathrm{Re} \alpha,\quad b=\mathrm{Im} \alpha \]で表す.$a+0i$を単に$a$と書き,$0+0i$を単に$0$と表すと,実数全体の集合$\mathbb{R}$は複素数全体の集合$\mathbb{C}$の部分集合とみなすことができる.虚部が0でない複素数を特に虚数と呼び,虚数のうち特に実部が0となるようなものを純虚数といい,純虚数を単に$bi$と書く.