実数集合$\mathbb{R}$とその部分集合
集合といわれるとパッと思いつくのは,実数集合$\mathbb{R}$か整数集合$\mathbb{Z}$だろうか?それとも自然数集合$\mathbb{N}$だろうか?実数集合にはその部分集合に重要なものが数多くある.それらの一部について簡単に説明していく.なお,この記事は,はじめの1歩として厳密性に欠ける説明を繰り返している.厳密性を求める方においては後の記事を待っていただくか,他を漁ってほしい.またそうでなくても,この記事を読んだあとにでもより詳しい説明にもあたってほしいと思う.
実数集合$\mathbb{R}$①
まず,実数の集合を$\mathbb{R}$で表すことにする.実数(real number)とは有理数を拡張した系となっている.厳密な定義として,実数体は順序体であって空でない上に有界な部分集合が上限をもつようなもので,実数体の元(要素)を実数という.なお実数の構成法にはコーシー列やデデキント切断によるものがある.こういった構成法や実数体や順序体など体の構造の話はしばしお待ちを…….
一般にある集合$A$に対し,任意の$a\in A$をいくつか取ってきてそれらからなる集合$A’$を構成する.このとき$A’$のことを$A$の部分集合という.\[ A’=\{a | a\in A\} \]
実数集合$\mathbb{R}$の部分集合には,自然数の集合$\mathbb{N}$や整数の集合$\mathbb{Z}$,有理数の集合$\mathbb{Q}$がある.これらを先に定義してから改めて実数集合についてみていくことにしよう.
正整数・非負整数の集合$\mathbb{N}$
ひつじが1匹(頭),2匹(頭),3匹(頭),…….よく眠れますね.
このような動物やものの数を数えるときに使う数の体系$1,2,3,\dots$を正整数という.高校までではよく自然数(Natural number)といわれますが,非負整数$0,1,2,\dots$と区別するためにここでは正整数ということにします.自然数は,数論などの文脈では正整数による定義,集合論や論理学での文脈では非負整数による定義と2種類あるため,0を含めるか否かが問題になる場合には区別しないといけない.ここでは区別の必要があるときにはそれぞれ正整数と非負整数と区別していうことにするが,区別の必要がないときには,単に自然数ということもある.
自然数全体の集合は$\mathbb{N}$と表される.後に説明する整数集合の部分集合という考え方から,正整数を$\mathbb{Z}_{>0}$,非負整数を$\mathbb{Z}_{\geq 0}$という記法もよく使われる.
単に定義としてまとめておくと\[ \mathbb{Z}_{>0} = \{1,2,3,\dots\} \] \[ \mathbb{Z}_{\geq 0}=\{0,1,2,\dots\} \]である.
自然数の形式的な定義にはペアノの公理がある.詳しくは整数論②で説明する.
整数集合$\mathbb{Z}$
整数集合$\mathbb{Z}$は,正整数(自然数)と0,それに負数からなる集合である.この整数全体の集合はドイツ語”Zahlen”から$\mathbb{Z}$と表す.厳密な構成については準同型などを使うので代数学の記事を書いてから詳しく説明しようと思う.
一旦,厳密な定義をほっておいて,先に説明した自然数の集合の定義を用いて\[ \mathbb
{Z}=\{x-y | x,y\in \mathbb{N}\} \] と定義する.
有理数の集合$\mathbb{Q}$
有理数全体からなる集合はイタリア語”quoziente”の頭文字を取って$\mathbb{Q}$で表す.先に説明した整数全体の集合$\mathbb{Z}$を用いて\[ \mathbb{Q}=\left\{\frac{a}{b} \mid a,b\in\mathbb{Z},b\neq 0\right\} \]である.
有理数の対極にある無理数全体の集合は,実数全体の集合$\mathbb{R}$と差集合の記号$\setminus$を用いて\[ \mathbb{R} \setminus \mathbb{Q} \]と表すこともある.
実数集合$\mathbb{R}$②
ようやくここまで戻ってこれましたね.かなりの部分を端折って説明してきましたが,のちのち解析学の文脈で厳密な定義を与えていきましょう.
ところで実数全体の集合$\mathbb{R}$は先の説明でも触れた通り,自然数や整数,有理数,無理数を含んでいる.特に有理数と無理数を合わせて実数である.実数とこのことをあらためてまとめておくと \[\mathbb{N} \subset \mathbb{Z} \subset \mathbb{Q} \subset \mathbb{R} \]となる.
(余談)複素数の集合
さらに複素数の集合を$\mathbb{C}$と表す.複素数は実数$a$,$b$と虚数単位$i$を用いて\[ z=a+bi \]と表す.$b=0$のとき\[ z=a \]はもちろん実数である.そのため複素数の集合の部分集合の1つに実数集合$\mathbb{R}$がある.
複素数にまつわる話は複素解析の記事を書いたときに詳しく説明したいと思う.